暗黙知と形式知 - インターアクティブ・マーケティング

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暗黙知と形式知/理屈より感情。モノより思い出
1)暗黙知
前ページより続く今回は、非言語によるインサイトの見つけ方。
その前に先ず、暗黙知について共通認識しておきましょう。
暗黙知とは、知っているのに気づいていないこと。
ビジネスに喩えると、ベテラン営業マンは、長年の経験や勘を、本人ですら気づかずに営業活動へ反映している場合があります。
本人ですら分かっていませんから「トップセールスの秘訣は何ですか?」と訊ねられても「さあ、特にありません」としか答えようがありません。教えるのがイヤで意地悪しているのではなく(笑)、わかっていないのです。
そこで
「お客さんとの接触を地道に続けているからではありませんか?」
といった質問を受けると、
「そういえば、こういう些細なことを続けています。が、そんな些細なことを秘訣をいっていいものかどうか…」
と思い当たる節にたどりつきます。そこで初めて暗黙知が形式知になります。
形式知とは、知っていることに気づいていること。
ベテラン営業マンの例を続けますと
「トップセールスの秘訣は何ですか?」
と訊ねられたとき、形式知になっていると、
「毎月一回の接触は欠かしません。会えなくてもハガキだけは出しています」
と明確に答えられるようになります。
購買行動も同じように、
「これが欲しかったんじゃありませんか?」
と訊ねられて初めて、
「ああっ!それだっ!」
と目覚めることがあります。暗黙知が形式知になる瞬間です。
たとえば、お腹が空いたとしましょう。何か食べたい。
ところが、何を食べたいのか自分でも分からずにいることがありませんか?
そこで「麺類?ごはん物?パン?」と訊ねられ、「麺のような気がする」
麺なら「そば?うどん?ラーメン?スパゲティ?」と訊ねられ、「どれも違うような気がする」
じゃあ切り口を替えて「暖かい麺?冷たい麺?」と訊ねられ、「暖かい麺かなあ」
ということは「麺が食べたいんじゃなくて、暖かいスープが飲みたいんじゃないの?」
「あ!そうだ!そういえば、ちょっと二日酔い気味なんで、暖かい汁物が食べたかったんだ」
と気づくわけです。
「そうだ!味噌汁が飲みたい!」
と。
こうした定性調査の手法を使うと、暗黙知を形式知にできます。
余談ですが、筆者のコンサルティングを受けた方々が「ナゼかヤル気が出る」というのは、モヤモヤしていた暗黙知が形式知になることで「わかった!」とスッキリするからでしょう。(参考ページ:気づいたら、わかった
どんなにニーズ(必要性)があっても、ウォンツ(要求性)があっても、暗黙知のまましなければ無きに等しいため、形式知になって、やっとニーズやウォンツになり得ます。購入動機が顕在化します。
購買動機を顕在化させるのは、もちろん、売る側の役目。
マーケティング・コンサルタント小笠原昭治
2)人は自分が欲しいものを知らずにいる
以上のように、人は、ニーズやウォンツを自覚したときに「買おうかな」と思います。購買動機の覚醒です。
となると、「ほら、これが必要でしょう?」「これが欲しいと思いませんか?」と、暗黙知を形式知化する必要があります。
そこで人は「ああっ!それだっ!」と目覚めます。
目覚めたときに動きます=買います。
以下余談。
日本マクドナルドの創業者である故・藤田田さんが「商売するなら、口と、女を狙え」と公言していた通り、彼は宝石商を営んでいましたし、日本マクドナルドを立ち上げました。その成功はご存知の通り。
藤田さんの主張はシンプルで「人は、生きるために、食べる。飲食商売は、絶対に繁盛する」というものでした。
確かに、成長期の70年代は、その通りでだったでしょう。
しかし、成熟しきった今の時代に、生存欲求に関わる商品であれば安泰だというような単純な構図で商売は成り立つと思いますか?
ひとくちに食事といっても、いろいろなシーンがあります。
その昔「焼肉店へ行く男女は恋人以上の関係」と言われたように、初めてのデートで立ちそば店を予約する酔狂人は皆無でしょう。
食事には、食事に適したシーンがあります。成熟時代における食事は、食事シーンというニーズと表裏一体。
一人で自宅で食事するときは「何でもいい」となるのも、高級料亭でなくてもいいという消去法による必然性。
マーケティング・コンサルタント小笠原昭治
3)食事の付加価値
食べられればそれでいいという生存欲は、食べるものに乏しい状況下における欲求で、食べるものが豊富になれば、ただ単に食べるのみならず、食事に付加価値が求められるようになります。
たとえば「食事の時間が短い」となると、待たずに食べられるカウンター形式の牛丼、立ちそば、カレーに集中します。昼どきの東京の混雑たるや、すさまじいものがあります。
早く食べきるという時間の概念が付加価値になります。
それに、安さが加わります。
制限された時間の中で、安く済ませたいとき、ファーストフードが選ばれます。
もう一つが、空間。
一人で気兼ねなく入れて、さっさと一人で食べられること。
ハンバーガーも、回転寿司も、スタンド式の牛丼も、食べ物を売っているのみならず、安さに加え、速さという時間と、一人で食べられる空間を売っていることになります。時空的付加価値です。
これに、安いという経済的付加価値が加わっています。
(ページ半分まで読みました)
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4)飲食店は食べ物を売っている?
もうお分かりでしょう。
スタンド店で食事する人は、早く提供され、かつ、早く食べられて、そこそこの値段の食事ならば、何でもいいということになります。
何でもいいということは、すぐに提供できて、500円以内であれば、他のメニューでも成り立つということ。
実際、近ごろでは、カツ丼や天丼の業態も現れました。一昔前なら500円なんて不可能だった価格です。
他に何があるか、メニューではなく、価格と空間とスピードの3つを条件に考えてみませんか?
短い時間にかきこめるよう考案された深川丼を500円以内にするのもアリでしょう。同じ理由で海鮮丼が500円以内の業態もあります。
…と、メニューを切り口にしてしまうと発想が凝り固まってしまいます。
よくよく考えてみて下さい。立ち食いそば屋は、そばやうどんだけを売っていますか?東京の立ちそばでは、
カレー、おにぎり、ラーメン、つけ麺、カツ丼、親子丼、野菜丼、豆腐丼、豚丼、まぐろ丼、天丼…果ては弁当まで売っています。
まるで大衆食堂。それが立ちそばの本質です。立ち食いそば屋は、大衆食堂だったです。
大衆食堂ですから、ライバルは、同業の立ちそば屋のみならず、大衆食堂すべてが競合になります。牛丼の吉○家、ハンバーガーのマク○ナルド、カレーのコ○イチ、中華食堂○高屋…などが業界の枠を超えてライバルになります。
繰り返しになりますが、成熟社会の飲食店は、食事を売っているのみならず、時間や空間という付加価値を売っていることがわかるでしょう。
「食べ物だけを売ってるんじゃない」
ということです。それを履き違えると、三千万円を投資して開店したラーメン店が半年で倒産することになります(実話)
誰が、どんな時に、どんな目的で食べるのか、5W1Hに至るまで突き詰めて考えてみましょう。
それには、インサイトが必須。
インサイトという本音からすれば、牛丼の場合、どうしても牛丼が食べたいわけじゃなく、そこそこ美味しい食べ物を、早く安く食べたいということになります。
マーケティング・コンサルタント小笠原昭治
5)コラージュ・リサーチ/Collage Reseach
言語以外にインサイトを探る方法は3つあります。その一つ目が、コラージュ。
コラージュとは、切り貼りして一枚の絵画を作り出す絵画技法で、ピカソが作り出したといわれています。が、意外性の妙を生み出す組み合わせ法としては、ピカソではなく、マックス・エルンストという画家が創案したそうです。
もともと、意外性を生み出すために作られた画法だったんですね。
「意外性」
これがコラージュのキーワードです。
リサーチにおけるコラージュは、ある一つのテーマのもとに、雑誌から写真を切り抜いてもらい、それを一枚のボードに貼り付け、何を物語っているか暗黙知を探る方法です。
たとえば、ステップワゴンなどのファミリーカーを売りたいとしましょう。
商品を売る考え方で広告を作ると、ファミリーカーの写真をドーンと載せ、スライドドアなどの特徴をドーンと載せ、価格をドーンと載せます。実際にチラシなどで見かけますね?
そうなると、機能とスタイルと価格の勝負になります。
買う側にすれば、どこのメーカーのファミリーカーだろうと、ハイスペックで価格が安ければ充分ということになります。 これでは差別化になりません。
6)ハードよりソフト
そこで、調査対象者の前に複数の雑誌をドンと置いて、家族をテーマした時にイメージが湧く、ありとあらゆる写真や、イラストを切り抜いてもらいます。暗黙知をビジュアルで表現するわけです。
ある人は家族旅行を切り抜くでしょう。ある人は海を切り抜くでしょう。ある人はディズニーリゾートを切り抜くでしょう。
それらのビジュアルによって、家族の象徴を探ると、
「家族と出かけた楽しい思い出が、いつか、宝物になる」

「今のうちに思い出という宝物を作っておきたい」

「宝物を見つけに家族で出かけよう」

「ファミリーカーで」
と、ファミリーカーの価値を付加すると
「家族の思い出=モノより思い出」
という訴求なります。この形式知が、他社ファミリーカーとの差別化になります。
※「モノより思い出」は日産セレナのコピーですが、筆者は日産セレナのプロモーションに関わっていませんでしたので(つまり、業務上で知りえた企業秘密を公開したわけではありませんので)本例は無関係であることをご理解ください。たまたま、例示が重なっただけです。
余談ですが、自動車のプロモーションにおける機密保持は、滑稽なほど厳しいものです。失笑するほど厳しい緘口令が布かれます。それほどまでして大企業が作った車でさえ、売れなければ消えてなくなります。筆者がプロモーションに関わった車も今では消えてなくなりました。
 (小笠原昭治/筆)
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